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広島高等裁判所 昭和57年(行コ)2号 判決

広島県福山市水呑町二四番一五号

控人

小土井利勝

右訴訟代理人弁護士

服部融憲

大國和江

阿波弘夫

木山潔

広島県福山市三吉町二丁目二五〇番三号

被控訴人

福山税務署長

信岡武士

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被控訴人

国税不服審判所長

小酒禮

右被控訴人両名指定代理人

菊池徹

山本武男

右被控訴人福山税務署長指定代理人

河村龍三

土井哲生

大土井秀樹

右被控訴人国税不服審判所長指定代理人

山口幸三

藤井清治

右当事者間の所得税更正処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人福山税務署長が控訴人に対して昭和四九年七月二四日付でなした昭和四六年分、同四七年分、及び同四八年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分を、いずれも取消す。

3  被控訴人国税不服審判所長が控訴人に対して昭和五一年一二月一〇日付でなした右本件原処分についての審査請求の裁決を取消す。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文と同じ

第二主張

次のとおり訂正及び補足するほか、原判決の事実摘示と同じであるからそれを引用する。

1  原判決二枚目裏七行目の「別表」を「原判決別表」と改め、九枚目表八行目の「取引先」から九行目の「もとに」までを右のとおり改める。

「昭和四六年ないし四八年分の年間売上原価として、所部係に控訴人の取引先等を調査させて把握した本判決別表(三)記載のとおりの右各年分の仕入取引の実績金額をもとに」

2  原判決九枚目表一〇行日の「業種形態が」の次に「控訴人ち類似する」と加え、末行目の「の平均的な差益率」を「三者を選び出し、その三業者の決算書にもとづき算出したところの本判決別表(四)ないし(六)中の算出差益率欄の数値を算術平均し、その小数点二位以下を切捨てた平均的な差益率」と、同枚目裏一行目の「平均的な所得率」を「三者の決算書にもとづき算出したところの本判決別表(四)ないし(六)中の算出所得率欄の数値を算術平均して小数点二位以下を切捨てた平均的な所得率」とそれぞれ改める。

3  原判決八枚目裏一〇行目の「別表」を「原判決別表」と改め、一四枚目裏二、三行目の「か又は把握することが著しく困難な」を削除し、一六枚目表六行目の「調査は」の次に「国民の生命・自由及び幸福追及権の尊重を規定した憲法一三条及び国民の営業選択の自由を保障した同法二二条一項にそれぞれ違背し」と加え、一九枚目表二行目を「本件推計課税額算定の方法が合理的であるとの点は争う。」と改める。

第三証拠

原審・当審記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、それを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求は、いずれも理由がないと判断するものであり、その理由は、次のとおり訂正及び補足するほか、原判決の理由の判示と同じであるから、それを引用する。

1  原判決二〇枚目表五行目及び二一枚目裏一行目の各「証人」を「原審証人」とそれぞれ改め、同枚目裏二行目の「第四号証、」の次に「当審証人荒石敏郎の証言とそれにより真正に成立したものと認められる乙第九ないし第一一号証、」と加え、三行目の「甲第一七」を「甲第四、第一七」と改め、同行目の「第一八号証、」の次に「原審における」と加え、五行目の「弁論」を「当審における証人安藤勇の証言・控訴人お第一、二回本人尋問の結果(ただし、後記措信しない部分を除く。)及び弁論」と改める。

2  原判決二四枚目表六行目の「同業者」を「同業者のうち更に控訴人と業種、業態、営業規模等が類似する業者三名(福山税務署管内の二業者、近隣の府中税務署管内の一業者)を選び出し、それらの業者の青色申告決算書にもとづき算出した被控訴人ら主張のとおり」と、八行目の「事業」から「同業者」までを「右類似同業者三名の決算書にもとづき算出した被控訴人ら主張のとおり」と、二四枚目裏二行目の「証人」を「原審証人」と、二、三行目の「原告本人尋問の結果」を「原審・当審における控訴人の各本人尋問の結果(当審分は第一、二回)」と、それぞれ改める。

3  原判決二八枚目表五行目の「点で」の次に「憲法一三条ないし二二条一項の規定違背や」と加え、八行目の「たしかに、」を削除し、二九枚目裏三行目の「そして」の次に左の説示を加える。

「前記2の(五)で認定説示の事実に、前掲甲第四号証、乙第九ないし第一一号証、原審・当審証人安藤勇、当審証人荒石敏郎の各証言及び当審における控訴人の第二回本人尋問の結果を総合すると、控訴人は、一般に注文があつたとき、その取引の見積金額を、その取引で使用する鋼材の重量(屯)数に、一屯あたりの一定金額を乗じて算出していること、その昭和四六年から四八年分の売上げにかかる鋼材のうちL型鋼材が多かつたこと、被控訴人署長の担当官は、前記類似同業者の選び出しにあたり、その類似性を保持させるための枠として、反面調査等で把握した控訴人の右三年間の仕入取引金額及び控訴人の従業員数四人については、その半分から二倍までの範囲の業者を選んだほか、仕入鋼材中にL型鋼材がある者及び控訴人と同じく天井クレーンのほかクレーンを所有しない者に限定し、その結果三業者となつたことが認められることを合わせ考えると、被控訴人署長が行つた本件推計課税額は、その抽出過程に被控訴人署長の恣意が介在する余地のないことも含めて合理的であるということができる。なお、右各証拠のほか、当審における控訴人の第二回本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第二四号証の一ないし一〇、第二五号証の一ないし一一、第二六号証の一ないし一二、第二七号証の一ないし一〇、第二八号証の一ないし一二、第二九号証の一ないし六、第三〇号証の一、二、第三一号証の一、二、第三二号証の一ないし六、第三三号証の一ないし七、第三四号証の一、二、第三五号証の一ないし七、第三六号証の一ないし三、第三七号証の一ないし五、第三八号証の一ないし三、第三九号証の一ないし六、第四〇号証の一ないし三、第四一号証の一ないし四、第四二号証、第四三号証の一ないし一〇を総合すると、控訴人の昭和四七年分の仕入取引の金額に関して、控訴人がこの年に仕入取引を行つた相手の員数は、被控訴人が反面調査等で把握した業者の員数一三名よりも多く、また右一三業者との仕入取引中、実際の金額が被控訴人署長の把握した金額と合致するのは数業者の取引にとどまり、その実際の取引額合計二五八三万五六三八円が右把握合計額二二九五万〇九三二円より二八八万五七〇六円多いことが認められるが、この事実があつても、被控訴人署長が行つた本件推計課税に合理性があることを未だ否定するものとはいえず、他に右合理性の存在を動かすべき的確な証拠はない。さらに、原審」

4  原判決二九枚目裏六行目の「別表」を「原判決別表」と、三〇枚目表六行目の「成立に争いのない」を「前掲」とそれぞれ改める。

5  原判決二九枚目裏八行目の「認められ、」の次に「なお、控訴人において、昭和四六年ないし四八年分の仕入関係についての反証を除いては、第一審における準備手続の効果として、その余の取引等の実額を主張することは許されず、」と加える。

二  よつて、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村上博已 裁判官 高木積夫 裁判官 滝口功)

別表(三)

売上原価の明細表

〈省略〉

別表(四)

昭和四六年分類似同業者の比率表

〈省略〉

別表(五)

昭和四七年分類似同業者の比率表

〈省略〉

別表(六)

昭和四八年分類似同業者の比率表

〈省略〉

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